キャラ設定の固定観念と意外性

はじめにちょっとしたミステリーをご紹介。

ある男が久しぶりの休暇に、公園へ息子を連れて遊ばせていた。ところが、父親がちょっと目を離した隙に息子が道路に飛び出してしまい、通りかかったトラックにはねられてしまう。すぐに父親が息子へ駆け寄るが、頭を強く打っているようで意識もなく、返事がない。
間もなく救急車が到着し、子供は病院へ運ばれる。
搬送先ではすぐに腕利きの脳外科医が呼ばれ待機していた。
救急車が病院に到着し、運ばれてきた子供を見た脳外科医はみるみる表情が変わった。
脳外科医はまっ青な顔でこう言う。
「これは私の息子です」

たしかこんな感じの話だったと思います。有名な話なので知っている人もいるかと思いますが。
ミステリーと言いつつも、実は話にはおかしなところはひとつもありません。


正解は「脳外科医が母親」。
この文章は「男女差別」や「セクハラ」などの人権啓蒙活動などでよく使われるようです。


ひとまずこの話はおいといて。
エイプリルフールネタの「萌えのベクトル表記」で、途中までは本気でベクトル表記ができるのではないかと思っていたのですが、ベクトル表記ではどうしても説明がつかないことがありました。
それが今日のもうひとつのテーマである「意外性」。


朝比奈みくる」をベクトル表記した場合、こんな感じになります。(アニメの構成第1話で明らかになる設定のみ)

「ロリ顔」と「上級生」または「巨乳」という設定は、相殺するようなベクトル配置になるので、ベクトルを合成した場合、絶対萌度が小さくなってしまいます。
少なくとも上のベクトルを合成した場合は、「ロリ顔」成分へのベクトルが完全に無くなってしまいます。
でも、おそらく一般的な感覚での体感萌度は単純な「ロリ顔」「上級生」「巨乳」の体感萌度よりも大きかったことかと思います。(とりあえず個人の趣味は考えない)
ベクトル表記では、このパラドックスにぶち当たるため手法に限界があるのです。
一見、相反する属性でも、合成すると体感萌度が高くなることを「意外性」による効果があるものとして、この「意外性」について考察をすすめることにします。


わかりやすい例として「ちびっ子先生」を取り上げてみます。
「ちびっ子先生」は最近では、ぱにぽにベッキーネギまネギ先生はにはにの結先生など。はるか昔にはコンポラキッドというのがあったりしましたが。(古!)
まずは、「先生」に注目するとこんな感じです。

レイヤ 設定A 固定観念
第7層 - -
第6層 - 高学歴(教員免許)
第5層 先生 年上
第4層 - -
第3層 - 大人、背が高い
第2層 - -
第1層 - -

別に、階層化モデルにする必要はないのですが。
Wikipediaによると、「先生」になるためには「教育職員免許状(教員免許)」が必要で、教員免許を持つの一般的な方法は「大学の教育学部の教職課程を修了」だそうです。
つまり大学を卒業しているってことなので、20歳を過ぎた「大人」ってことになります。
さらに主人公が「生徒」という立場なら、「先生」は「年上」で、相対的に「背が高い」といった固定観念があります。
といった具合に与えた設定は「先生」だけですが、芋づる式に「高学歴」「大人」「年上」「背が高い」などの設定も潜在的に追加されます。
ここで追加した潜在的な設定は「媒体の効果」で使用した記号を用いるならば「○」か「△」で与えられる設定であり、特に「△」になるようなものは意外性を展開するには都合のよいものになります。


先ほどの表にもう1項目加えます。

レイヤ 設定A 固定観念 設定B
第7層 - - -
第6層 - 高学歴(教員免許) 低学歴
第5層 先生 年上 年下
第4層 - - -
第3層 - 大人、背が高い 子供、背が低い
第2層 - - -
第1層 - - -

「設定B」は固定観念と逆の設定を与えただけのものです。
ただ、「設定B」を与えると必ずしも意外性による「萌え」が期待できるわけではなく、「設定B」がそもそも「萌え」ない設定である場合は当然ながら効果は期待できないでしょう。


意外性の設定をするとき、もうひとつ注意しなければいけないことがあるのですが。
例として「姉」について考えます。

レイヤ 設定A 固定観念 設定B
第7層 - - -
第6層 - しっかり者 ドジっ娘
第5層 年上、家族 年下、他人
第4層 - - -
第3層 - 大人の体型、背が高い 幼児体型、背が低い
第2層 - - -
第1層 - 女性 男性

色を付けたところです。
「姉」といえば「年上」で「家族」で「女性」であることは常識であり、記号で表すならば「◎」のところ。
ここを「意外性」として設定するのはおすすめできません。
例外として、「成恵の世界」の「香奈花」は成恵の「姉」であるにもかかわらず、ウラシマ効果まで使って年下という設定になってます。
つまり、ここを設定したいのであれば、納得のいく第7層のエピソードがないと難しいかと思われます。
労力に見合うだけの効果が期待できないようであれば、あっさりあきらめてしまうのも手かと。


固定観念を持っている設定は第5層に比較的集中しています。
固定観念、第一印象、ステレオタイプなどの言葉を連想させるような設定に目をつけて、固定観念を洗い出して逆の設定を出してみて、その中にキャッチーな設定があればねらい目かもしれません。


まとめると意外性の設定をしたい場合は次のような手順を取るといいようです。

  1. 元となる設定Aを与える
  2. 設定Aの固定観念から導かれる潜在的な設定を列挙
  3. 「◎」の固定観念を除外する
  4. 固定観念の逆の設定Bを考える
  5. 設定Bからキャッチーなものを絞り込む


朝比奈みくる」の話に戻って、アニメの1話を見ていたらみくるの設定は「ロリ顔」が最初に与えられ、続いて「上級生」、「巨乳」と与えられています。

レイヤ 設定A 固定観念 設定B
第7層 - - -
第6層 - - -
第5層 - 下級生(同級生) 上級生
第4層 - - -
第3層 ロリ顔 幼児体型 巨乳
第2層 - - -
第1層 - - -

1話では、ハルヒたちが1年生であることが明らかになっていることから、下級生という設定はありません。
表には書いていませんが、登場シーンでみくるは「女子の制服を着ている」ことから同じ学校に通う女生徒であることが潜在的に設定されます。


詳しい解説はしませんが、「意外性」をもつキャラは他にこんなのがあります。

  • ブラックジャック(無免許で天才外科医)
  • ピアキャロ3の貴子さん(処女ババァ←「ババァ」は誉め言葉)
  • おとボクの宮小路瑞穂(女子校の男子生徒)
  • はぴねすの準(女子の制服を着た男子)
  • 一休さんのやんちゃ姫(やんちゃで姫って・・)

ネタ切れです・・orz
たしか斎藤千和声でジジイ言葉をしゃべるキャラがいたような気がするんだけど、なんだったかな・・


そして、「意外性」と「萌え」の関係をうまいこと説明できるベクトル表記の代わりのものについてはやっぱり説明できていないのであった・・