著作権ビジネスと補償金を考えてみた

世の中どんどん便利になっていきますが、著作権ビジネスについてはどんどん不便になっていきますね。
録画したテレビ番組がダビングできなかったり、CMを編集できなかったり、DVDで最初に出てくる配給会社のロゴがスキップできなかったりして。


先日、コピーワンスの規制が著作権関連団体が譲歩して9回までOKになったというニュースがありましたが、消費者側にとってはいまいち不評だったみたいだったようです。
そんな折りに、このようなニュースがまた飛び込んできました。
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20070717/fca.htm

「今回(コピーワンス見直し)の合意が目前に迫っていた時期に、あたかも制限緩和案の成立、すなわち関係者間の譲歩の成果を否定するような主張をされたことについては遺憾」と述べ、「コンテンツに対するリスペクトやクリエイターに対する適正な対価の還元として補償金制度は大前提。JEITAの主張がまかり通れば、ユーザーはこれまでのように私的録画をするにも、権利者の許諾が必要になる。そんな社会をユーザーは望むのでしょうか?」

言いたいことはよくわかりますよ。
今回の件は1回を9回にしたということを利用者に対しては規制を緩和したんだというおためごかしを述べて、他のあいまいな部分についてはうやむやにしたかったんでしょう。
ここに来てJEITAがうっかり補償金の話を出してしまったのでユーザの視点がそっちに行ってしまったわけです。
そりゃおもしろくないですよね。
でも、そこは放っておけばほとんどの利用者は気づかなかったろうに、うっかり声明文を出して話を大きくしてしまったあたりがうっかりさんですね。

Appleの主張

補償金制度については、以前iPodなどにもかけようという論調がありましたが、それについてAppleが出した意見書が非常に痛快でした。
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20350151,00.htm

そもそも私的複製ができないような措置を取っていない音楽レーベルにこそ問題があるという考えだ。私的複製により権利侵害を被ったというのであれば、それを自らの手で技術的に防ぐべきではないかとアップルは指摘する。「自ら製造販売している製品の不備をハードウェア会社に対して責任転嫁するのは無責任かつ自己中心的な姿勢である」

中略して。

さらにアップルは文化庁の行政運営が「著作権者団体の意見のみを汲み取り、消費者、機器メーカーの立場は無視し続けている」と激しく非難。「アップルを私的録音録画小委員会から閉め出し、欠席裁判で物事も決める閉鎖的な体質を持つ文化庁の典型的な隠蔽体質を良く表している。(中略)はなから『結論ありき』の審議会運営をする著作権事務局には真摯な姿勢は微塵も感じられず、もはや公平公正な著作権行政を運営する適切な省庁とは言い難く、速やかに著作権行政を他の省庁に移管することを強く望む」(アップル)と訴えている。

日本のメーカーには言いにくいようなことをズバズバと言ってくれます。
ひとまずハードウェアの補償金については据え置きになっているみたいです。法律を解釈するとデジデジ複製の場合は補償金は「支払わなければならない」のだから遠慮なく取ればいいのに。
法律自体が破綻してますね。できもしないことを決めちゃったって感じで。

法律がわかりにくい

法律というのはそもそもわかりやすく書いてあるものなのですが、この著作権法についてはすこぶるわかりにくい。
例外だらけなんですよ。
「基本はこうですよ」というのが最初に書いてあって、その後に教育目的の例外にまぎれるように著作権ビジネスをやっている人たちが都合のいいような例外がたくさん書いてあります。
マスコミ関係者が著作物を扱う時に都合がいいようなことが書いてあったり、レンタルやカラオケ、インターネットのような新しい媒体が出てきたときに、それらに課金できるような条項が追加されていたりしています。


私的録音録画補償金については著作権法の第五章に載っています。
ここで最初に謳っているのが、補償金を受け取る権利を行使する方法なのですが、読み進めていくと権利を行使できる団体はある特定の団体に導かれるようになっているのがわかります。

  • イ 私的録音に係る著作物に関し第21条に規定する権利を有する者を構成員とする団体(その連合体を含む。)であつて、国内において私的録音に係る著作物に関し同条に規定する権利を有する者の利益を代表すると認められるもの
  • ハ 国内において実演を業とする者の相当数を構成員とする団体(その連合体を含む。)
  • ニ 国内において商業用レコードの製作を業とする者の相当数を構成員とする団体(その連合体を含む。)

・・に該当する団体はなーんだ?
とっても簡単ななぞなぞでした。
「相当数の構成員とする団体」って文言は本当に必要なんでしょうかね?
著作権ビジネスへの新規参入を阻害してます。これが企業だったら独占禁止法になりかねないところですが、そこらへんはちゃんと考えているみたいで。

イ 営利を目的としないこと。

頭いいなぁ。


ここでは詳しく述べませんが、著作権法104条でこの後に続く文言も苦笑を誘うものばかり。よくこんな法律が通ったなと感心してしまいましたよ。中学校の校則だってもう少しまともに理路整然と書いてあるんじゃないですか?
104条の5とかすごいですよ。パソコンで音楽ファイルのコピーさえもできません。
日本の立法機関って本当に機能してるのかなぁ。

社団法人さまにおねがい☆

前述の記事にこんな一説があります。

「中身のある提案はされていない。補償金制度は、お金が欲しいということではなく、コンテンツを楽しむのをキープするために必要なインフラ」

著作権の管理団体の存在意義が、著作者と利用者との間のインフラ整備ということを認識しているようなのでホッとしました。
でも、このインフラ整備ですが「法律の制定」に偏ってますね。
社団法人で非営利団体なんだろうけど、著作物に対して消費者が支払ったカネの一部をハネているのでしょうが、それが法律制定へのロビー活動や、天下りしてきたお役人さんへのお給料になっているというパターンなのでしょうね。
消費者側は大々的にロビー活動することもできないし、お役人さんに高いお給料も払えないので、不可解な法律ができても泣き寝入りするしかありません。


法律を作るだけでなく、著作者が利用者へスムーズに著作物を提供して、利用者が著作物を利用しやすいようなシステムを構築することにも我々が支払ったお金を役立ててもらいたいものです。
管理団体の人たちは、著作者側に立って話を進めているようですが、カネの流れで言えば、利用者が払ったカネなので、利用者側の立場も考慮してもらいたいです。
営利を目的としていないのであれば。

こんな世の中に。

まずはCDをなんとかして欲しい。
切手サイズにCDよりもはるかにたくさんの楽曲を収録できるご時世に、あんな大きなものは時代遅れ。
CDが生まれて20年も経とうかというのに、アルバムは3000円と値段が変わらないのも不思議です。
市価も変動しているだろうし、20年も経てばプレスのコストも変わっているはず。
物価の上昇とプレスコストの削減が絶妙なバランスで推移しているのでしょうか。
そんなバカな。
もし、コストが下がっているのであればユーザにも還元して欲しいものです。
話を戻すと、CDを買ってきても最近では1回パソコンに取り込んでしまうと後はパソコンで聞くかiPodに入れて聞くかのどちらかなので、CDである必要は全くないんですよね。
iTunesとかもあるけど、オタク関連の楽曲はまだまだ充実してないみたいだし。


CDだけじゃなく、映像についてもそうですね。
DVDとかだとディスクを交換するのが面倒なので、買ってきたDVDをHDDに落としてしまえばすごい便利だと思います。
著作権の問題も解決した法解釈だけじゃない技術的なインフラ整備をおねがいしたいです。


シングルCDで買ったものがベストアルバムに収録されることがありますが、シングルCDで支払った分をアルバムで二重課金されるのもなんか違和感があります。
らぶドルのCDでED曲を6人で歌ったバージョンと6人別々に歌ったバージョンで7種類リリースされていたかと思いますが、曲と歌詞は同じだとすれば実演者分のみ課金されるというのが正しいんじゃないかと直感的に思うのですが。
全文読んでないけど、そういう請求があっても対応しなくてもいいような条文がどっかに書いていそうだなぁ。著作物の解釈の範囲と譲渡権の解釈次第でしょうか。
重課金を回避するような技術的なインフラが整備されるとうれしいです。


著作者側の矛盾はすぐに法律が整備されますが、利用者側の矛盾ってのはなかなか法律も整備されないし、表面化することも少ないですね・・
管理団体の中の人は法律の専門家は充実してるけど、技術的な専門家は不足気味なのかもしれませんね。

農免道路方式がいいと思う

デジデジコピーに対して取られる補償金ですが、一律課金されてしまうことに不満を持つ人も少なくないようです。
古いアーカイブを移し替えたアナデジコピーかもしれないし、旅行や運動会で撮ったビデオかもしれません。
返還請求の手続きも面倒なので、取られっぱなしになることが多いけど、そのへんは管理団体側で気を利かせて取りすぎた補償金をプールするしくみを作ればいいんじゃないでしょうか。


農免道路(Wikipedia)というのがあります。
農林漁業用機械に利用される揮発油税は免除されるという法律があるのですが、実際にガソリンスタンドで揮発油税を差し引いてトラクターに給油しているわけではなく、トラクターに給油されたと想定される額を揮発油税の財源からプールして、農道の整備に当てているそうです。


これと同じように、補償金のうちデジデジコピーが行われなかったと想定される分をプールしておいて、利用者が使いやすいようなインフラの整備に充当できないものでしょうか。
利用者が行うロビー活動の資金や、お役人さんにお給料を払うための引当金でもいいなぁ。