創作における媒体の効果
おとといのキャラクター設定における階層化モデルを元に、創作における媒体(メディア)が及ぼす効果について考察していきます。
まずはおさらい。
レイヤ | 定義 | 具体例 |
---|---|---|
第7層 | 現在・過去・未来 | シナリオ・エピソード、フラグ |
第6層 | 趣味・性格・くせ・特技 | ボクっ娘、ドジっ娘、ツンデレ |
第5層 | 社会的立場・職業・所属 | 巫女、メイド、いいんちょ |
第4層 | 外見的な特徴・センス | ニーソ、ツイテ、メガネ |
第3層 | 身体的な特徴・個体差 | ちびっ子、ロリ、泣きぼくろ |
第2層 | 先天的な特徴 | 誕生日、名前、お姫様 |
第1層 | 生物学的特徴 | 男女、ロボ子、妖精 |
創作(ノンフィクションでもいいのですが)の世界では世界を伝えるためには媒体が必要になります。
映画やミュージカルなどもあるけど、ここはオタクのニッキなのでオタクに多く受け入れられている2次元以下の媒体のみを取り上げます。
- ノベル(小説)
- イラスト・挿絵
- マンガ・コミック
- CDドラマ・ラジオドラマ
- アニメーション
これからそれぞれの階層について得意・不得意を評価していきますが、あらかじめ記号について説明しておきます。
- ◎:媒体によって強く定義されイメージが収束される
- ○:観測者(主人公)の想像を借りる必要があるが、ほぼ間違いなく意図したものに収束する
- △:媒体が提示した情報では不十分で、観測者(主人公)の想像によっては意図しないものがイメージされる可能性がある
- ×:媒体によって定義することはむずかしい
簡単に「◎」に近づくほどよりリアリティが増すと思ってもらえればいいです。
では行きます。
レイヤ | ノベル | イラスト | マンガ | CDドラマ | アニメ |
---|---|---|---|---|---|
第7層 | ○ | × | ◎ | ○ | ◎ |
第6層 | ○ | × | ○ | ○ | ◎ |
第5層 | ◎ | △ | ○ | ○ | ◎ |
第4層 | ○ | ◎ | ◎ | △ | ◎ |
第3層 | ○ | ○ | ◎ | △ | ◎ |
第2層 | ◎ | △ | ○ | △ | ◎ |
第1層 | ◎ | ○ | ○ | ○ | ○ |
微妙ですかね。それほどズレてないとは思いますけど。
ゲームについてはジャンルごとに変わるので評価してません。
ビジュアルノベルや恋愛SLGに限定して評価してもよかったけど、ノベルとイラストのORを取ればいいような気がしたのでやめました。
マンガ・アニメについては、可能性という意味では全部「◎」なのですが、それぞれの媒体の特性を維持しながらという条件で評価しています。
登場人物に延々とモノローグでストーリーを語らせておけばノベルやCDドラマと同様の効果が得られますが、それはもはやマンガやアニメの性質が損なわれているような気がします。
・・といった感じで、媒体にはそれぞれ得意分野と不得意分野があります。
ここではそれぞれの媒体の可能性について評価しています。
「◎」や「○」がついているところでも、表現するかはクリエイターの「才能」と「センス」に左右されます。
「才能」というのは、クリエイターの能力不足などが原因で、媒体の特性を十分に発揮できていないパターン。できるのに表現しきれないパターン。
「センス」というのは、表現できるけど、あえて表現しないパターンです。こっちは奥が深い。
表現しないことで、観測者(主人公)に自由に想像させるねらいがあります。観測者に「想像させる」というのは創作において重要なファクターです。
たとえば、比較的「○」が少ないイラスト媒体ですが、セリフやシチュエーションなどの情報量が少ない分、表情や小道具などから自分好みのストーリーやシチュエーションを妄想することができます。
これは場合によっては明確な情報を与えられるよりも観測者を「萌え」させることができます。
また、ノベルなどの文章でも、萌え萌えなシチュエーションだけを書き連ねておいて、あえてキャラクター設定は定義しないでおくと、そこに妄想で自分好みのキャラを当てはめることができます。
こうすることで、「シチュエーションはいいんだけどキャラが・・」とか「キャラは萌えるけどシチュがなぁ・・」というような悩みも解決。
実のところ、キャラもシチュも両方妄想するのが一番いいのですが、妄想力にも個人差があり、限界もあるので妄想に長けた人(クリエイター)から一部拝借することになるのです。
どこの設定を与えて、どこを妄想させるか。この辺のバランスは非常にむずかしいところがあります。
よけいな情報や独りよがりな情報を与えてしまうと「イメージと違う」とか「ぼくの○○タンはこんな子じゃない」みたいなことになりかねませんから。
アニメ化したらイメージが違ったとか、声優さんのイメージが違うとか、表紙に釣られて買ったエロ本が(以下略)
・・といった具合に、○が多いほど媒体として優れているというわけではありません。
いつものように話が逸れたところで元に戻します。
媒体ごとに得意分野と不得意分野があることはすでに述べました。
メディアミックスを考えた場合どうでしょう。
最近、ひだまりスケッチがノベル化されていて驚いたのですが、ひだまりスケッチのメディア戦略は
- マンガ
- アニメ
- ノベル
でした。
ページをめくるまでの刹那ではありますが、マンガの前に「表紙イラスト」を加えてもいいかもしれません。
メディアミックスで媒体を変える時に気を付けたいポイントとして、
- 元の媒体で表現しきれない部分を媒体を変えて表現する
- 元の媒体で隠蔽している部分を媒体を変えても継承する
このバランスが重要になるのではないかと思います。
クリエイターの才能や媒体の特性の限界により、表現しきれなかった部分については媒体の特性を十分に発揮して表現すればいいし、クリエイターのセンスで隠蔽しているのであればそれは継承するべきなのでしょう。
ひだまりスケッチの場合はマンガ(特に4コママンガ)という媒体の限界により表現しきれていない部分が多くあり、新房監督がそこを継承しながら巧く動かして第3層から第6層の再定義・詳細化に成功しており、とてもよいアニメになったと思います。
ノベルは読んでないけど、うめ先生と新房監督が表現しきれていない部分となると相当厳しかったんじゃないでしょうかね。
オリジナルのストーリー(第7層)を展開するくらいしか魅力を引き出す方法はなかったのでは?
まるで同人活動みたい。
つまり、表現しきれていない部分があるほどコンテンツには可能性が残されていると思うわけですよ。
媒体を変える時に、何が表現しきれていないのかを検証するときに、この階層化モデルが役に立たないかなとか思ってます。(立たネーヨ)
と、ここまで書いて今日はお終い。
次回はもう少し具体的に作品やキャラについて扱ってみたいと思います。