アニメビジネスの商習慣について

寝過ぎたせいで昨日はうまく頭が働かなかったので、書くのをやめてしまったたのですが。
http://www.geneon-ent.co.jp/rondorobe/gne-sg/index.htm
引き続きこれ↑の4回目の話です。
川瀬PとUPLIFT氏と里見さんも混じって話していたアニメビジネスの奇妙な商習慣の話がかなり興味深いところ。

  • 納品書がない
  • でもちゃんと金が支払われている
  • というか前払いされている
  • 納品してもしなくてもお金は支払われている

これシャレになってないですね。税務署の人にマジで怒られますよ。


本当はジェネオンショウゲートのがあれば良かったのですが非上場なので、似たようなビジネスをやってて上場しているバンダイビジュアルの財務諸表を見てみました。
http://www.bandaivisual.co.jp/pdf/2007/pr070627.pdf ←PDFです
以下、とりあえず素人考えなので、話半分以下に見てもらうのがいいと思います。


バランスシート(貸借対照表)の流動資産に35〜40億の前渡金が計上されてます。これが前払いのお金というやつでしょうか。
実に流動資産の20%を占めてますが、他の業種でこれだけの前渡金はなかなか計上されないでしょう。
ちなみに親会社のバンダイナムコホールディングスの連結諸表では勘定科目に現れていないのでおそらく「その他」扱いになっているものと思われます。
この、前渡金の全部がアニメの製作費にあたっているかどうかは不明ですが。


損益計算書を見てみます。
売上原価にもまた35〜40億くらい立っています。
偶然にも前渡金とほぼ同じ額。
前渡金がアニメの製作費に割り当てられ、売上原価もアニメの製作費だと仮定すると、前渡金の回収期間はまるまる1年です。
1年前に制作にお金を渡してそのお金が1年後に返ってくるしくみです。要するにアニメを作るのには1年かかるということですか。
前渡金の額が売上原価よりも少なかったら、年内に前渡金が資産化するということなので、回収期間が短いということになります。
流動資産に載っている前渡金というのは、会計期中に財を得ることができないお金ということです。


一般的なアニメ製作のロードマップを考えてみましょう。
たとえばこの10月にはじまったアニメの場合、12月か1月にはDVDが発売されることになります。
1クールアニメだとDVDは4,5本出るので、全巻出終わるのは4月か5月頃。放送開始の10月の3か月前くらいから制作を開始すれば6,7月くらいからでちょうど1年くらいですね。
どこでどういう金が動くのかは知りませんが。
あー、よく考えたらCDやDVDの製造原価を考慮してなかったから、実際はもっと回収期間は長いですね。1年以上ですか。


ボツになった企画の前渡金の行方も気になります。
ボツ企画も売上に貢献しているということで原価に充てていそうだけど、前渡金の特損とかで計上すると見ている方はおもしろいかもしれません。株主もそういう情報を求めているんじゃないでしょうか。


回収に1年もかかっていたらキャッシュフローは相当悪いんだろうなと思ったのですが、やっぱりキャッシュフロー計算書に前渡金が計上されています。
キャッシュフローをよくする簡単な方法として。

  • 在庫を減らす
  • 取り立ては急がせる
  • 支払いは渋る

というのがあるのですが、ものがないのに支払いをしちゃってる時点で相当厳しそうです。
キャッシュフロー計算書の前渡金では四半期で4〜7億。ばらつきもあるだろうから年間で15〜30億くらいです。
やっぱりバランスシートの35億にはちと足りないです。


では、今後のアニメビジネスの契約形態をどうすればいいのかというところですが、まずは前渡金の商習慣をなんとかしないと。
企画段階では請負契約ではなく作業委託にするといいんじゃないでしょうか。
成果物を定めずにいっしょに作業するだけで作業した分の給料を月締めで支払う感じ。
企画が固まって制作段階に入ったら請負契約に移行。運転資金がヤバイというのであれば、検収を分けて支払いも刻めばいいでしょう。話数ごととかで。
発注側にもメリットがあるはずなんですけど。


できるものならとっくにやっているんでしょうね。
財務もアニメビジネスも素人なので外してたらごめんなさい。