音楽CDと独占禁止法について

らき☆すたのリミックスCDで感動したので、ここ最近は神前暁さんが作曲した曲を調べてました。
アイドルマスターに提供したものを動画共有サイトで試聴したのですが、これがすこぶるよい。
URGENT!!!とokey-dokeyなのですがiPodに入れて聞きたくなったので、CDが欲しくなりました。
調べてみたところ、URGENT!!!は歌姫楽園asin:B000H30GX6で、Okey-dokeyはTOP×TOPasin:B000NOISC0に収録されていることがわかりました。
どちらもアルバムで歌姫楽園の方は品薄で入手困難なようですが、TOP×TOPは2枚組で4000円もします。
1曲のために4000円を払うべきか1週間くらい悩みましたが・・結局買いましたよ。
結局、ごまえーとOkey-dokeyだけをiPodに入れて聞いてます・・


1曲ずつバラ売りしてくれたらありがたいんですけどね。
というわけで、気になったのですが、アルバムに収録されている1曲だけ欲しいのに、消費者はアルバムという形で本来欲しいもの以外の曲もセットで購入させられている状況なのですが、これって公正取引委員会が指定した不公正な取引方法(抱き合わせ販売)に抵触しないのでしょうか。
抱き合わせ販売への抵触を回避する条件が2つほどあるらしいです。

  1. 相互に関連性の非常に高い商品であること
  2. 抱き合わせの他にバラ売りもする

1については製作者側の意図でアルバムという形でひとつ商品であるとの解釈がされそうですが、MicrosoftWindowsにMS-OfficeをOSと一緒に使う関連性の高い商品ということでバンドル販売したところ、公取委によって排除勧告されたことがあります。
2のバラ売りについては、パッケージングのことを考えると、1曲ずつ提供するのは難しいという技術的な背景があったかもしれませんが、現在はDL販売などがあるので、現代の事情を勘案すると実現可能じゃないかと思います。
というか、曲をバラ売りしないことによる機会損失も無視できないのでは?
1曲のためにアルバムを買うのがイヤでレンタルで済ませたり、不道徳な行動をしているということはないだろうか?
コンテンツプロバイダーは前向きに検討してもらいたいです。


さて、音楽CDと独占禁止法といえば、もうひとつのデリケートな話題として再販売価格維持制度(再販制度)があります。
メーカーが小売店に販売価格を指示する制度のことで、独占禁止法で不公正な取引方法(再販価格維持)ということで原則禁止になってます。
ただし、著作物については例外となっているようで、以下の6項目については今のところ再販価格維持してもいいとされています。

  • 書籍
  • 雑誌
  • 新聞
  • レコード盤
  • 音楽テープ
  • 音楽CD

音楽CDが値引き当たり前のamazonや量販店のCD売り場などでも値引きされずに定価で売っているのはこのためです。
DVDなどの映像ソフトは対象外です。
音楽ソフトでもレコード、テープ、CD以外の媒体も対象外です。
したがって、SACDDVD-Audio、昔ソニーが売っていたMDなんかも対象外。ついでにCCCDも対象外にしてもらいたいものです。
あとi-Tunes storeなどによるDL販売も対象外です。


音楽業界にとって、再販制度のおかげでCDの利益率が大きくなるだろうから、再販制度の無いCD以外のメディアでの販売に消極的になのでしょうね。
切手サイズのメモリに1000曲以上収容できるこのご時世に、12センチの円盤に74分しか収録できない時代遅れのメディアを我々はいつまで使い続けなければいけないんでしょうか。
音楽業界が時代に追いつくためには、ここはひとつ音楽CDの再販制度を廃止してもらいたいところです。


再販制度に対する公正取引委員会の取り組みとしては、過去に2001年3月に見解を出しています。
日本レコード協会のサイトに載っているのですが。
http://www.riaj.or.jp/all_info/saihan/saihan3.html

公正取引委員会としては、今後とも著作物再販制度の廃止について国民的合意が得られるよう努力を傾注するとともに、当面存置される同制度が硬直的に運用されて消費者利益が害されることがないよう著作物の取引実態の調査・検証に努めることとする。

また、輸入盤レコードに対してレコード輸入権を導入しようとしたときの2003年の見解。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/03121003/002.htm

2 我が国におけるCD等の販売については,他の主要国にはない再販売価格維持契約独占禁止法適用除外行為として認められており,既に自由な価格競争が制限されているところ,このような状況下においてレコード輸入権を創設すれば,輸入による価格競争もなくなり,市場における競争や消費者利益に与える悪影響が極めて大きい。

公取委としてはやっぱり廃止したいようです。
特例は少ない方がいいですからね。管理上の問題もありますし。


2001年の見解に対するレコード協会のコメント。

公取委が実施した意見聴取において、一般消費者の98.9%が著作物商品の再販制度存続を希望しているという現実は、全国どこでも同一の本やCDが同一の価格で買える、というこの制度の素晴らしさを享受している 全国の一般消費者は再販制度になんの不都合も不満も感じていないことを示している。公取委の結論は、文字通り民主主義に則った、妥当なものである。

!?
なんか騙されているような気がするなぁ。非常に不可解な数字です。
長い間、消費者に強要されてきた商習慣に慣れてしまって思考停止しているだけなのでは?
再販制度をきちんと理解していたのかなぁ。


ほとんどのアルバムCDが約3000円でマキシシングルCDが約1200円。客観的に見ても競争の原理が働いているようには思えません。
CDなんて20年前の枯れた技術のはずなのに、未だに値段に変化がないというのも不思議です。
再販制度を廃止することで、小売店で安価に売るためにメーカーへの働きかけも出るだろうし、小売店にとっても再販時限を待つことなく小売店の判断で在庫処分(値引き)することが可能になります。
Wikipediaの項目にもありますが、音楽ソフトに再販制度を設けているのは、先進国でも日本くらいだそうです。


すでに2001年から7年経ちました。
インターネットが普及し、ネット通販やDL販売なども一般化していて、当時とは状況がまったく変わっています。
テクノロジーも進歩して、コンパクトディスクよりも安価で高性能なメディアがたくさん存在しています。
それに7年前と違って、今は著作物に対する消費者の関心が非常に高くなっています。
今話し合うことで、有意義な対話ができるのではないでしょうか。


現在の公正取引委員会は橋梁談合の摘発など、他省庁のしがらみなどのいい意味で空気を読まない(容赦ない)組織としていい仕事をしてくれています。
再販制度や抱き合わせの件以外にも著作権ビジネス業界には消費者に不利益になりかねない独禁法的にグレーな事案がありそうなので、いい意味で空気を読まない公取委の活躍に期待したくなってしまいます。
最近の公取委の活躍は委員長が現在の竹島一彦氏に変わってからのようです。竹島氏が着任したのは2002年なので、2001年に出した「当面許可」という見解には関与してません。
ちなみに、2001年の委員長は、現在のプロ野球コミッショナーを務めている根来泰周氏です。


レコード協会は最後に次の言葉で締めくくってます。

一方、著作物商品を送り出す側としては、再販制度に胡座をかくごとき態度があってはならない。それは消費者を裏切ることになる。レコード業界では既に、1)時限再販期間の導入 2)一部非再販指定商品の発売 3)返品・廃盤商品の値引きセール 4)ポイント・カードの実施 など、再販制度の弾力的運用を始めている。何が消費者にとって真の利益かの観点から、これらの施策は今後とも自主的に継続して行く。

何が消費者にとって真の利益かを追求することについては積極的なようなので、是非とも時代に沿った柔軟な対応をお願いしたいところです。