アニメの脚本について書いてみる

先日ニッキのコメント欄でわはは大王さんと脚本の話で盛り上がったので、アニメの脚本について書いてみたくなりました。
オリジナル作品ならまだしも、原作付き作品に至っては、脚本の位置づけというのは素人にはわかりづらいところでありますが、たとえ原作があろうがなかろうがアニメにおける脚本の重要性というのは変わらないと私は思います。


アニメ脚本家の横手美智子さんが3人のユニットであるという話はマニアの間では比較的有名な話。
3人組の真偽については諸説あるみたいですが、横手美智子さんの分業体制についてはその真偽以上に興味深い内容になっています。

横手美智子」はマネジメントとプロットとダイアログ担当の3人で作っているユニットです。

プロットというのはあらすじのこと。どのように話を展開させるかという青写真のようなものでしょう。
ダイアログは直訳すると「会話」ということになるんでしょうが、脚本家のボキャブラリや会話のテンポみたいなものと意訳してます。
マネジメントはひとまずおいといて、脚本家の善し悪しは「プロット」と「ダイアログ」のセンスなんだと思います。
プロットとダイアログに着目すると、その脚本家の得意・不得意や特徴が見えてきます。


倉田英之さんはダイアログはずば抜けたセンスをもっているけど、プロットは苦手。特に終盤の展開のプロットを考えるのは致命的に弱い。ガンソードもまとめきれなかったし、R.O.Dの12巻(最終巻)が出ないことからも明らか。倉田さんが脚本やるときは監督やPDが終盤にかけてサポートしてあげるのが成功のカギ。
でも、女の子がイチャイチャするシーンについては周到にプロットを打ってくるので侮れません。
黒田洋介さんはプロットもダイアログもどちらもすごい脚本家でした。
人が死んだり、登場人物が絶望に至る展開が多いのですが、それまでのプロットが周到。死亡フラグがわかりづらい。というか黒田流の死亡フラグがあったりするのですよ。
絶望に至ったキャラクターのダイアログも秀逸でした。スクライドとかの男臭い言い回しとかも。
でも、最近はそうでもないんですよね。
大河内一楼さんはプロットがすごい。まいど予想外な展開に驚かされます。谷口監督と一緒に考えているのかもしれませんが。
ダイアログは普通かなぁ。プロットがすごいのであまり気にならないけど。プロットが単調になりやすい萌え系作品は全般的に苦手みたいです。
大野木寛さんもプロットがすごかったです。
上江洲誠さんはあんなことやってますが、意外とプロットが手堅い。ダイアログもセンスがいい。
エロゲ出身としては都築真紀さんがいますが、都築さんのプロットもよく練られています。プロットというかキャラの設定とかよく考えられてます。
久弥直樹さんがsolaで脚本を担当した回は良かったですね。
プロットも緩急のついた展開になっていて、ダイアログもよかった。蒼乃とこよりがイチャイチャするシーンは倉田さんのお株を奪うほどの実力でした。
もし久弥さんがsolaのシリーズ構成を担当していたら、アニメの歴史が変わっていたかもしれないと本気で思ってます。


逆にダメな脚本は、緩急がなくイベント消化的に進むプロットとひねりのない単調なダイアログかなぁ。具体的に名前を挙げるのは憚れますが。
1クールや2クールという短い期間でアニメが制作されることが多いので、1話にがちゃがちゃ詰め込んだ結果、緩急がなくただイベントが消化されるだけという展開になっちゃってるんでしょう。
まるでエロゲでctrlキー押しっぱなしにしているみたい。
最近では狂乱家族日記で2,3回ありました。
AIR/kanonは作画良かったけど、シナリオはややイベント消化型だったような気がします。アンチが多いのはそのへんもあるのかも。
コードギアスもがちゃがちゃ詰め込んでいる感じではあるのですが、あれが単調な感じにならないのはコンテの存在もありそうです。狂乱家族日記にしても、必ずしも脚本家のせいにするのは違うのかも。
1クールアニメとかでは脚本家に要求されるスキルは高いんでしょう。


というわけで、原作ものでも脚本家が違えばプロットやスクリプトの違いでアニメ化にあたって見せ場にもってくるシーンが違ってくるし、プロットが巧い脚本家は原作以上に作品をもり立てることも可能なわけで、スクリプトが巧い脚本家は原作以上にキャラクターの魅力を引き出すことも可能なわけですよ。


最後にひとまず読み飛ばした「マネジメント」について。
このマネジメントというのは、監督やプロデューサ、原作者らから正確に意図を汲み取るスキルなんだと思います。
これも脚本家にとって重要なスキルですが、監督やプロデューサとの相性もあるから私はこのスキルを単独で評価するのはどうかなと思ってます。
大河内さんと谷口監督や倉田さんと舛成監督みたいに監督と脚本家の相性がいいかどうかというところがポイントになるんじゃないでしょうか。